2010年度、ALLOTMENTトラベルアワード受賞者は、隼田大輔さん
2010年2月14日"2010年度ALLOTMENTトラベルアワード"の厳正な審査が行われ、受賞者は写真家の隼田大輔さんと決定いたしました。また、受賞に際し、2010年2月27日、東京・神田のアートスペースKANDADAで本トラベルアワード設立に合わせて開催された『與語直子 ロンドン/東京巡回展』東京展のオープニングパーティーにて、本審査結果の発表と受賞式が行われました。隼田大輔さんは、本トラベルアワードの賞金をもとに、作品制作のため屋久島へ旅する予定です。
ALLOTMENTトラベルアワード2010:受賞者:隼田大輔
略歴:1981年、兵庫県生まれ。1999-2005年、横浜市立大学。2002-2003年、フランス滞在。2004年、Bankart1929, 森山大道 鈴木理策ゼミ。
個展:2009年、「うばたま」 工房親, 東京。2009年、「いさなとり」 ZAIM, 横浜。2005年、「無題」 Musée F, 東京。2001年、「無題」 横浜日仏学院, 横浜。
グループ展:2009年、SLICK 2009, パリ, フランス。2009年、ART OSAKA 2009, 大阪。
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2010年度は、ALLOTMENTトラベルアワードの立ち上げにも関わらず、53名もの方からの応募をいただいました。ありがとうございました。(※ウェブ上での発表が当初の予定より遅れてしまいました。お詫び申し上げます)次年度も引き続き”ALLOTMENTトラベルアワード”を行う予定です。応募要項など詳細を決定次第、本ウェブサイトにて報告させていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。
2010年度|総評/西村智弘
西村智弘(にしむら ともひろ)/批評家
今回、「ALLOTMENTトラベル・アワード」の記念すべき第一回目の審査を担当することになった。初回のために今後の方向性を決める可能性もあり、審査の責任はなかなか重大である。応募総数は53本で決して多い数ではないが、はじまったばかりで認知度が低いこと、募集から締め切りまでの期間が短かったことなどを考えると、よく集まった方だと思う。実をいうとわたしはもっと少ないのではないかと予想していた。全体の作品レベルも高かったといえるだろう。
(c)眞島竜男 「トラベル・アワード」という名称の通り、このコンペティションの大きな特徴はどこか希望の場所に旅行に行って作品を制作するところにある。とくにジャンルの規定はなくて、さまざまなタイプの作品が集まったといえるが、全体的に見るならば大きく分けて二つの傾向が目立っていた。ひとつは、特定の場所に出向いてテーマに従ったリサーチを行い、その結果をインスタレーションなどにするというもので、確かに旅行に行くという応募の条件にはよく合っている。こうしたタイプの作品をとりあえずリサーチ系と呼ぶことにする。もうひとつ多かったのが写真で、これも撮影場所が作品の契機になるという点でトラベル・アワードにふさわしいジャンルだといえる。
(c)村上友重 一方、絵画や彫刻といったオーソドックスな美術のスタイルの応募は比較的少なかった。旅行に行くという条件との兼ね合いが難しかったのだろうか。しかし考え方次第であって、絵画や彫刻でも十分に選ばれる可能性があると思うので、今後はこの方面でも応募も期待したい。
リサーチ系の作品は、応募の数が多かった割には上位に食いこんだ企画が少なかった。その理由のひとつとして、似たような企画が多かったことがあげられるだろう。この種の作品では、リサーチのコンセプトとともにどのような形で結果を発表するかという作品の形態も問われるだろう。そうしたなかでは、外国にある鳥居の写真を撮るという下道基行、団塊の世代が郊外に建てたマイホームの写真を再構成するというAre You Meaning Company、洋画家の梅原龍三郎が書いた「北京日記」を現地でたどるという眞島竜男の企画などがおもしろく、興味を引いた。
(c)佐野陽一 写真に関しては、佐野陽一、城戸保、隼田大輔、村上友重など、明快なスタイルをもつ作家が多かった。これらの作家は、単なるドキュメンタリーではなく、カメラで光をとらえることに造形性を見いだしている点でも共通していた。各自が独自の方法論を獲得しており、作品としての完成度も高く、そのため写真に関してはハイ・レベルの争いになったといえる。
審査は企画案と過去の作品資料に基づいて行われた。近藤正勝氏とわたしがすべての企画書に目を通し、評価すべき企画書に印をつけ、その評価をお互いに照らし合わせながら審査を進めていった。最初に重なっていたのは11名で、そこからだんだんに減らしていって3名の作家が残った。その3名とは佐野、城戸、隼田で、興味深いことにいずれも写真の作家であった。
(c)城戸保 わたしとしてはこの3名のなかで誰が選ばれてもよかったし、むしろ3名全員に賞を与えたい心境であった。しかし、選出するのはひとりというのがコンペの趣旨であるので、誰かに決めなければならない。近藤氏も同じ思いだったと思うが、ひとりに絞りこむのはかなりきびしい選択で、大いに悩まされることになった。最終的に選ばれたのは隼田大輔である。彼が選ばれたことのうちには、まったく未知の可能性に賭けてみようという期待の側面が大きかったように思う。
ひとりしか選べないというのは難しいというのが正直な感想である。わたし自身がかつて公募に選ばれることで雑誌などに文章を書くようになったという経緯があり、またたびたびコンペティションの審査をした経験からいうと、公募で賞を取るかどうかには運のようなものも大きく左右している。とくに今回のように選出されるが1名という場合はなおさらであろう。一方、これまで多くの作家を見てきて感じたことは、運をものにし、チャンスを活かすのも作家に必要な才能のひとつなのではないかということである。惜しくも選に漏れた作家は、今後もさまざまな機会にチャレンジしてほしいし、受賞者の隼田氏に関しては、今回の結果がこれから活動を続ける上での励みになってくれるとよいと思う。
2010年度|総評/近藤正勝
近藤正勝 (こんどう まさかつ)/美術家
(c)Are You Meaning Company 今回が初めてのAllotmentトラベルアワードである。十分な告知ができなかったが全国から優秀な作家53名の応募があった。応募者の表現手段は多様であり美術が既に形式から全く自由であると感じることができたのは大変愉快である。応募者の目的は様々で、ある作家は歴史的なリサーチであり、またある者は会いたい人に会いに行くという、作品をその場で制作する者もあれば、確りと計画されたプロジェクトを完結させるという作家もいた。未来の作品がどこから芽を出すのか全くのミステリーだか、このAllotmentトラベルアワードの成り立ちを振り返れば、そこにある目的を設定して何処に行き新しい経験をすることで、現在の自己を解放し思考のパラドックスからぬけ出して作品が能動的に展開して行く契機になれば良いと思う。まずは作家の作品が確りと存在し、その作品をグイグイと押し進め行く強い意思が示されているか、または既に存在する作品から解放されるために勇敢な旅立ちを決意しているか、旅行の目的と作家の作品と照らし合わせながらその必然性を探ってみた。
(c)太田麻里 今回の審査で上位に残った作家は、プロジェクトベースで念入りなリサーチから作品を作っているAre You Meaning Company、眞島竜男。パフォーマンスで神話や童話をベースに現代社会の中で生きていく根本矛盾を自己の身体と切り離すこと無く表現し強い個性を感じさせた太田麻里。映像作家では映画などによる映像体験が人の記憶の中に浸食し、現実との間で引き起こす不思議な経験を題材にした平川祐樹の作品は大変興味深いものであった。唯一絵画(平面)の作家である吉田夏美の作品は、自然が自分の美しいと認識する感覚を超えてむしろ恐ろしく不安を感じる対象となる経験を元に力強いパノラマ絵画を創作している。
(c)吉田夏美
このトラベルアワードの成り立ち故か、今回は多くの写真作家の応募があり最終選考に残ってきた。リサーチとドキュメントの形式で時間の経過を表現している下道基行。日常生活の些細な心の動きや視点という難しい題材を独特な表現力をもってカメラに収めている点で優れた感性を感じさせた森岡友樹、城戸保。光の原理を繊細に扱い個性豊かな表現方法を確立している佐野陽一、村上友重など大変質の高いものであったが、受賞した隼田大輔の写真作品は、夜人口照明のないところで写真を撮る、つまり月の光で写真を撮る。
彼が理論的に考えていた闇の世界とは、場所やものの輪郭が無い総体としての一つの闇(彼曰く、アノニマスな世界)と考えたわけですが、実際に写真を撮ってみると、その考えを裏切ってかすかな輪郭が浮かび上がり、その場所をぎりぎりで特定づける作品ができてしまったというものです。その写真作品は大変シンプルなものですが、彼が感じるその不思議というものが面白く映り込んでいると感じました。思考することと作品が出来上がったときのギャップ(裏切り)を、思考から作品を解放して行く大切な鍵として確り認識しながらまた闇に向かって行く彼を応援したいと思いました。
(c)隼田大輔
2010年度|審査経過
下記に2010年度ALLOTMENTトラベルアワード審査経過をご報告いたします。
審査員:西村智弘(にしむら ともひろ)/美術評論家、映像評論家、近藤正勝 (こんどう まさかつ)/美術家
募集期間: 2009年10月15日から 20110年1月15日迄
応募者総数: 53名 /全国より
受賞者:隼田大輔 / 東京在住
2010年2月14日日曜日、西村智弘氏、近藤正勝氏により厳密に審査をおこなった。
1、 審査員それぞれが53名の作家から送られてきた作品イメージ5枚と略歴、そして、トラベルアワードでどこへ何故いきたいのかの説明文に目を通した。
2、 両者審査員が3段階の評価基準で作家を選別。(作品の質と旅行の目的を見定めた)
3、 そのうち優良基準の三ツ星の付いた作家の名前を照らし合わせる。西村氏より12名、近藤氏より14名の名前があがった。
4、 両者審査員が共に推薦した作家に絞ったところ、なんと11名の作家名が重なっていた。佐野陽一、森岡友樹、眞島竜男、平川祐樹、太田麻里、吉田夏奈、Are You Meaning Company、下道基行、城戸保、村上友重、隼田大輔。
6、 ここで一旦、両者が選んだ作家について、作品をどう読み取ったか、また旅行の目的と可能性などについて所見をかわした。
7、 所見を参考にしながら、11名の作家を各審査員が6名に絞り込み照らし合わせ、両者が推薦し重なった名前から、各者3名に絞り込んだが、これも同様の作家を推薦していた。
8、 最後3名の作家からお互いに1名に絞った結果、両審査員共に隼田大輔さんの名前を挙げた。
2010年度|審査員
ALLOTMENTトラベルアワードの審査員は、原則2名で行います。また、任期を2年とし、1年ごとに新しい審査員が関わる形とします。また、審査員は、次の審査員を推薦した後、任期を終えることとなります。ALLOTMENTトラベルアワードは、応募していただくアーティストに対して、多様な評価を与えられるようなシステムを継続的に運営していきます。
2009年の初年度は、下記のお二方が審査員となります。
西村智弘(にしむら ともひろ)/美術評論家、映像評論家
1963年、茨城県生まれ。1990年、第13期イメージフォーラム付属映像研究所終了。1993年、美術出版社主催「第11回芸術評論」に入選。以後、美術評論家、映像評論家として活動する。著書に『日本芸術写真史:浮世絵からデジカメまで』(美学出版、2008)、共編著に『スーパー・アバンギャルド映像術』(フイルムアート社、2002)、共著に『映像表現の創造特性と可能性』(角川書店、2000)などがある。美術評論家連盟、日本映像学会会員。東京造形大学、東京工芸大学、多摩美術大学などで非常勤講師を務める。
http://nishimuratomohiro.web.fc2.com/
2010-11|審査員
近藤正勝 (こんどう まさかつ)/美術家
1962年、愛知県生まれ。 1993年、ロンドン大学 スレードスクール.オブ.ファインアート卒業。ロンドン在住。 主要展会:1993年、 Annihilation/絶滅展(ビクトリアミロギャラリー)ロンドン。1997年、ジョンムーア展20(ウォーカーアートギャラリー)リバプール。2000年、Prime/記憶された色と形(東京オペラシティアートギャラリー)東京。2001年、サーフェイス(ネザーランド写真美術館)ロッテルダム。2006年、夢の中の自然(群馬県館林美術館)群馬。2007年、Bridge/橋 (ディビットリズリーギャラリー)ロンドン。 受賞歴:1990年、ウィルソン.ステール、記念賞(ロンドン大学)。1997年、ジョンムーアス2nd賞(ウォカーアートギャラリー)など。
http://masakatsukondo.com
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